comico(コミコ) ReLIFE~リライフ~

「ReLIFE リライフ/エピソード0」映画来場者特典冊子

投稿日:2017年4月25日 更新日:

ReLIFE comico 人生 青春 アニメ 映画
◆画像引用:comico

comico(コミコ)で連載中!夜宵草さんが描く、27歳ニートが、1年限定で17歳に?
大人気青春ストーリー実写映画版
【Re:LIFE~リライフ~】20万名限定
来場者特典短編小説のネタバレ記事になります。
※電子書籍comico(コミコ)より

その時、出逢うはずのない、をした・・・。

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公開初日に観てきた【映画リライフ最速レビューはこちら】

◆今回の小冊子は海崎と夜明の出会いを夜宵草先生が特別に小説仕立てで書き下ろしたエピソード0 。
 海崎は日代とも出会っていた。
◆漫画はこちら:Re:LIFE~リライフ~ネタバレ(当ブログ内)

エピソード0

すげー、渋谷って実在したんだ・・・・・・。

雑踏の中で立ち尽くし、今さら出てきた感想がそれだった。

もちろん渋谷という土地がこの世にあることはずっと前からわかっていた。

でも本当にドラマや漫画に出てくるまんまの
渋谷が実在しているなんて、俺はどこかで信じてなかったんだ。

人が多い、マジでみんな標準語、あの看板とかテレビでよく見るよな・・・・・・。

俺の中にある渋谷のイメージといえば映画のセットみたいなもので、
普通の人たちが普通に往き来しているなんて、嘘みたいだった。

修学旅行の一日目ではしゃぎまくった、あの巨大遊園地の方がまだ現実感があった。

あっちは確かに “夢の国” だけど、有名な観光地の一つなんだと考えれば、
それは地元の大分にも、数は少ないがあるにはあるわけで。

けれどここには仕事中のサラリーマンや、
何をしてるのかわからないけど忙しそうな人が沢山いて、
観光地にはない、人が生活している雰囲気に溢れている。

テレビが演出したものだとばかり思っていた渋谷の雑踏は、
そうではなく日常として確かに存在していたのだ。

まるで、ドラマの登場人物になったみたいだ・・・・・!

うずうずと、ワケもなく体が揺れた。

なんだか、無意味に走り出したくなるような気分だった。

『基本ガキなんよなぁ、新太』

『制服着用、ケータイは持つなっちだけで、
 俺たちテンションダダ下がりなんに』

『高二の修学旅行で
 しおり握りしめんなや、遠足か!』

自由行動になってバスを降りたとき、
その瞬間からわかりやすく浮かれた気分だった俺に気づいて、
友達はみんな笑っていた。

ちょっと恥ずかしくなったけど、
アイツらだって本心を隠してカッコつけてる
だけだってことはわかっている。

その証拠に、班行動が決まりだと言われていたにもかかわらず、
アイツらときたら、あっという間にどこかへと散って行ってしまった。

結局みんな、行きたいところをちゃっかり事前チェックしていて、
好き勝手にバラけていったのだ。

で、今は渋谷のド真ん中で、たった一人立ち尽くす俺がいるわけだ。

さて、と、しおりを確認しようとして・・・・・すぐにやめた。

笑ったヤツらの顔を思い出したこともあるが。

そもそもしおりにある地図には、
目指す場所など記されていないとわかっていたからだ。

バツネコ♪オフィシャルショップ。

その店は日本各地(といっても大都市のみ)にあるが、中でも渋谷店にはここにしかないグッズがあり、俺はそれをお土産にと頼まれていた。

頼んできたのは後輩の女子で、
体育祭の実行委員で一緒になって以来、なんとなく仲が良くなった相手だ。

付き合ってんの?と聞かれることもあったが、俺にも向こうにも、そんなつもりはない。

普通に仲が良い、それだけの間柄だ。

すごく大きな店でもなさそうなんだよなぁ。

道沿いにはたくさんの文字や写真などが
掲げられていた。

でもほとんどが広告で、たとえば『◯◯屋』という風に、店の名前を記してくれているものなどはあまりなかった。

「多分、どっかのビルの中なんじゃないかなぁ」と後輩は言っていたし、
それで看板などが期待できないとなれば、やみくもに外を歩き回っていてもショップは見つけられそうにない。

やれやれ。

誰かに聞いてみるしかないか、
と、辺りを見渡す。

行き過ぎる人はみんな速足で、
俺は俺で渋谷のド真ん中で声をかけることに異常に緊張していて、
呼び止めるタイミングなんかは全然つかめなかった。

その店なら知ってるから任せろと言ってたのに、
俺を置いてどこかに行ってしまったヤツの顔が憎々しく思い出される。

アイツ、東京には何度か行ったことがあるって理由で班長になったくせに。

途方に暮れて、自然と肩が落ちる。

ふとティッシュ配りのお兄さんと目が合ってしまい、バツが悪くなって大きな建物の軒下へと逃げ込んだ。

そこには待ち合わせをするかのような人たちが何人か立っており、
その中に、一人同い年くらいの男子がいるのを見つけた。

制服を着ているが、俺とは違ってブレザー姿で、大きめのカバンをたすき掛けにしている。

街の空気に溶け込むように立っているのがなんだかさすがな感じで、俺は一瞬、ほほう、と感心してしまった。

それが声に出ていたわけではないのだろうが、
ブレザー姿の相手は、不思議そうにこっちを見た。

うわ、こうなったら声をかけないわけにはいかないじゃんか。

俺は、自分で自分に「なんだそれ」と
ツッコミたくなるようなへんな笑顔を作って、歩み寄って行く。

「あの~・・・・・・」

「はい?」

帰ってきた声は、少し笑うような、
それでいて少しもいやな感じはしない落ち着いた声だった。

「すみません、急に。バツネコショップって、どこにあるかわかります?」

「バツネコショップ・・・・?」

首を傾げて、相手は考えた。

男子にしてはやけに柔らかそうな髪が、
ふわりと揺れる。

遠目に見たときから感じていたが、近くで見るとなおのこと、髪色や肌の色、何だったら制服の中に着ているベストの色までが、全部淡くて薄い。

色素が足りない感じだな、と思った。

「あ、思い出しました。
 それならこの路地の先の
 デパートの中にあったはずです。
 何階だったかはわからないけど、
 入口に行けばインフォメーションも
 あるはずですよ」

ニコニコと、丁寧な口調がなんか不思議だ。

初対面だから俺も丁寧語だったけど、向こうからの言葉はセールスマンのものみたいに聞こえた。

俺は一度、言われた方向の路地を確認してから、「行けばわかる・・・・・・よね?」

「多分。
 あ、なんなら一緒に行きましょうか?」

「い、いや、それは悪いし!
 わかんないようだったら、また誰かに聞きます」

少し上ずった俺の声に特に反応も見せず、相手はニコニコしたままだった。

もしかしてバカにされてる?

普通ならそう感じていたかもしれない。

けれど最初に声を聞いたときと同じく、
不思議といやな風に思えないのはこの男子の人徳だろうか?

それともこれが、都会に住む人間の身軽さというものなのだろうか?

「バツネコなんて、
 ずいぶんかわいい趣味ですね」

あれこれと印象を分析していると、
また少しだけ笑うようなトーンの声が聞こえた。

「や、違うから!
 お土産にって頼まれただけだし!」

「そうでしたか。
 それはそれは失礼しました」

変わらない笑顔。

ここまでくると、人がいいというより
単に人の話を聞いてないんじゃないかとアヤシくなる。

「お土産ということは、
 修学旅行か何かですか?」

「え? ああ、
 そうだけど・・・・・・わかります?」

「はい。見た目で」

「どうせ田舎モンだよ!」

思わず丁寧語を忘れた。

「やだなぁ、そんなこと言ってない
 じゃないですか。
 あまり見たことのない学生服だなって
 思ったんで、それで」

う・・・・・・と、思わず言葉に詰まる。

田舎モンなんて、自分から余計なことを言ってしまったことを後悔する。

そうやって気にしすぎているのが、
都会慣れしていない証拠だ。

「ごめん、初めての東京に都会スゲー!
 って緊張しちゃってて・・・・・・」

「素直な人ですねー。
 でも、ならなおさら、
 一緒に行かなくて大丈夫ですか?」

「遠慮することないですよ」

「だからいいって」

正直なところを言うと、一緒に行ったとしてもその間の会話に気を遣いそうな気がしたので、ありがたい申し出にはうんと返せなかった。

ごめん、ヘタレで、と心のなかでとりあえずあやまった。

「じゃあ、ありがとう。俺、行ってみるから」

「はい。ちゃんとたどり着けることを
 祈ってますよ。・・・・・・あ」

「え?」

相手の思い出したような声に、歩き出そうとしていた俺は立ち止まる。

「あのショップ・・・・・・今日休みだったかも」

「えぇっ!?」

「いえ、よく考えたら違いました。
 思い違いです。失礼しました」

ソッコーで否定! なんだよそれ、
よく考えたらって、多分よく考えてなんかいないだろ。

俺、やっぱりちょっとバカにされてる!?

隠すこともなく感情のままを表現に出した俺に、
色素の足りないブレザー男子はクスクス笑う。

「お気をつけて~」

ひらひらと、手まで振ってくる。

悪びれない様子に、これが相手の性格なんだと納得して、俺はあらためて歩きだす。

人通りは相変わらず多くて、溺れるみたいにその波の中にすべり込む。

一度振り返ると、見送ってくれた手が、
まだひらひらと揺れていた。




クラスの親睦会

人通りの中、私は所在なく立ち尽くす。

もう一度服の袖口を確認すると、
いやなタバコの臭いはまだ残っていた。

さっきまで一緒だったクラスメイトに、
もちろんタバコを吸う人なんていない。

これは、カラオケの部屋にもとからこびりついていた臭いだ。

エアコンから出てくる風にも混じっていたかもしれない。

ため息が漏れる。

やはり来なければよかった。

クラスの親睦会を、
なぜ渋谷の真ん中にまで来てやらなくてはいけないのかがわからない。

なぜカラオケだったのかがわからない。

そもそもカラオケ自体がわからない。

歌を披露したいのならプロを目指せばいい、
歌が聴きたいのならCDを聴いたりちゃんとしたコンサートに行けばいい。

みんな一緒に同じ部屋で歌ったりするから
親睦が深められるのだとも聞いたが、
少なくともさっきまでの集まりでは、
個人個人が好き勝手に歌っているだけで、
とてもそんな関係性が築かれたとは思えない。

『ほらぁ、次、歌いなよー』

いえ、結構です。

『えー、ノリ悪ーい』

ノリって何なのだろう?

みんなに合わせて楽しそうにしろという
ことなのだろうか。

もっと空気を読めということなのだろうか。

たとえばそうやって友だちができたとしても、その関係は顔色ばかりをうかがうつまらないものになってはしまわないだろうか。

それは、私のイメージにあるものとは違う。

でも、だったら何が私のイメージなのかと聞かれても困ってしまう。

友だちとはなにか、人間関係ってなんなのか。

他人がやっていることが違うと感じても、
実は私自身にもちゃんとわかっていない。

イメージと違うからそうはできないと言い訳して、
結局、
自分をどうにかしようとはせず、
いろいろなことを遮断してしまう。

できないことはあきらめるものだと決めてかかっている。

だってその方が自分らしくいられる気がするから。

面倒くさいと思われても、やはり私は、
自分を変えるような冒険をすることはごめんだ。

また、ため息が漏れる。

二次会だ、その前にお茶だとカラオケ後に盛り上がった同級生たちに置いて行かれて、
むしろそれは望んだことだったので気にもしていないが、渋谷の真ん中という現在位置は、
私を途方に暮れさせた。

ここまで来るときはみんなのあとをついて行くだけだった。

だから情けないことに、ここからどうやって駅に戻ればよいのかわからないのだ。

できればドラッグストアなどに寄って、タバコの臭いが消せるスプレーを買って帰りたいのだが、
駅の場所さえわからないのだから、
もはやそれは高望みだ。

思わず、すぐ近くにあった大きなデパートに目をやる。

入口から見える一階には何やら高級そうな化粧品店が見えるが、普通の臭い消しなど取り扱っているのだろうか・・・・・・。

いや、多分ないだろう―――――。

私は、こういうときには取り柄になるあきらめの早さを発揮して、
おとなしく駅の場所を探すことに集中しようと決めた。

デパートに背を向けて、左右を見渡してから、とりあえず歩きだす。

渋谷は一番低い所に駅があることは知っていたので、まずは近くの坂を下ってみようと思った。

声をかけられたのは、そんなときだった。

「あの、すみません」

声に立ち止まったのは、反射的なものだ。

振り返ったのは、街中で突然物音がしたとき、びっくりしてそうするのと同じだ。

すぐ後ろに、多分高校生だろう学生服姿の男の人が立っていた。

先ほど私がのぞいていたデパートから出てきたみたいで、片手には、派手なデザインの紙袋を持っている。

「すみません、道、聞きたいんですけど」

男の人は、困っているはずなのになぜか笑顔だった。

笑顔って楽しいときだけに出てくるものじゃないと何かの本で読んだことがあったけれど、こういうことを言っていたのだろうか。

「あの・・・・・・」

困った笑顔のままで、男の人がもう一度言った。

「はい」

「代々木体育館って、
 どう行ったらいいんですかね?」

「よよぎたいいくかん・・・・・・」

「俺、修学旅行で来てるんですけど、
 集合場所がわからなくなっちゃって」

「体育館が集合場所なんですか」

「バスが、そこで待ってるんです」

「そうですか・・・・・・」

なるほど修学旅行なら迷ってしまうのも無理はない。

代々木の体育館といえば、確か私が向かおうとしている駅とは逆の、土地的には高い場所にあったはずだ。

とはいえ自分だけのことならまだしも、人に道を教えるのに、高い方に向かって下さい、と言うのもどうかと思う。

ここは街中で、道も何もない山の中などではないのだから。

「申し訳ありません。
 私も、この辺りには詳しくないので」

「あ、そう・・・・・・なんだ」

明らかにがっかりした声。

でもやっぱり表情には笑顔のニュアンスが残っている。

器用な人だと思った。

「お力になれず、本当に申し訳ありません」

私は、目を閉じて頭を下げる。

でもそんな様子に男の人はひどく慌てたようだった。

今回ばかりは笑顔が消えた。

何か、対応を間違えてしまっただろうか?

「そんな・・・・・・頭とか下げないでくださいよ。
 いきなり声をかけちゃって、
 こちらの方こそごめんなさい」

男の人の方も頭を下げた。

先ほどまでのすみませんが、今はごめんなさいに変わっていた。

何だかそれが親し気に聞こえて、ちょっとだけ妙な気持ちになった。

いやな感じではなくて、くすぐったくなるような、初めての感覚だった。

「実は目的の店に行くのにも
 道を聞いたんです。
 そこはたどり着けたんですけど、
 戻ることまでは考えてなくて。
 あはは・・・・・・」

それは・・・・・・まさに今の私も似たようなものだ。

照れたように頬をかく男の人の手が動いて、持っていた紙袋が揺れた。

派手なデザインだと思っていた模様は、一つ一つが黒い生き物のの顔をしていた。

「ねこ・・・・・・?」

「ああ、バツネコ。
 お土産に頼まれちゃって」

バツ・・・・・・ネコ・・・・・・。

袋に印刷されていたのは、言われてみれば確かにネコで、どんな気に入らないことがあったのかふてくされた表情をしていた。

首輪に、おそらく名前の由来であろうバツ印が付いているので、もしかするとそれが気に入らないのかもしれない。

ふむ、バツネコ・・・・・・。愛嬌のある、おもしろいキャラクターだ。

「最近は、こういうのが流行りなんですね」

「最近って・・・・・・いや、知らない?
 結構有名だと思ってたんだけど、
 こっちじゃそれほどでもないの?」

・・・・・・・・・・・・?

ぽかんとする私の顔を意外そうな目で見るけれど、知らないのだから仕方がない。

そしてそれは多分、地域の問題などではない。

もしかしたら私のまわりでも流行っていて、
知らないのは私だけだったのかもしれない。

お土産にできるくらいなのだから、
むしろ流行っていないということの方が
不自然だ。

なるほど、バツネコ、か。

「かわいい趣味ですね」

「いや、だから~」

「? だから?」

「あ、ごめん。
 それ言われたの今日二回目だったから。
 これはお土産で、俺のじゃないんだよ」

「そうでしたか。失礼しました」

また頭を下げると、男の人は今度、
吹き出すように笑った。

悪いと思ったのかすぐに口を押さえて隠したけれど、不器用なしぐさが余計に笑ったことを強調している。

器用な人だと思ったのは、考え違いだったか。

だけど器用かどうかはどうでも良くて、私は目の前のこの人のことを、ただ不思議な人だと感じるようになっていた。

初対面なのに、しかも男の人なのに、私がこんなに会話をすることができるなんて。

今までそんな相手はいなかった。

すごく幼い頃にはいたかもしれないけれど、ある程度成長してからは、家族以外にそういう人がいた記憶がない。

だから不思議だ。

いやもっと正しく言うと・・・・・・そう、新鮮だ。

目の前のこの人は、私に知らない感覚を与える人なのだ。

不思議で、新鮮で、そして珍しい人だ。

「じゃあ、俺、行きます。
 まだ時間には余裕あるけど。
 まっすぐ戻れる自信ないし」

ありがとう、と言って、男の人は・・・・・・彼は、立ち去ろうとした。

きっとこのあと、また誰かに声をかけて、
私に聞いたことをたずねるのだろう。

――――――申し訳ない。

最初から私なんかではなく、もっと他の人を選んでいれば、無駄な時間を過ごすこともなかったのに。

がっかりさせてしまっただろうと思うと、
胸の奥がチクリと痛んだ。

出会って、せっかくここまで
会話することのできた相手を、
このまま行かせてしまうのはいけない気がした。

「失礼ですが、
 代々木体育館までの道を
 ご存知ではありませんか」

私の声に、彼が振り返る。

しかし私が声をかけたのは彼ではなく、
すぐそばを通り過ぎようとうとしたOL風のお姉さんにだった。

彼は、え? と、声に出して駆け戻ってきた。

「ちょっと・・・・・・え? 何してんの?」

「道をおたずねしようと」

「でも代々木体育館って、
 俺が聞いたのと同じ・・・・・・」

「はい。お手伝いしようと思って」

「なんで?」

なんでと言われても・・・・・・
手伝おうと思ったというのは、理由になってなかったのだろうか?
今はそんな会話をするよりも、
声をかけたお姉さんも驚いてるし、
まずは道を教えてもらうのが先だと思うのだけれど。

「ありがたいけど、悪いよ、
 そこまでしてもらうの」

「大したことじゃないです、
 気にしないでください。これは、
 よくみなさんが言う、あの・・・・・・」

すぐに言葉が出て来なくて、少し考えた。

彼や、道をたずねたお姉さんまでが、そんな私を待ってくれた。

「そうです。
 困ったときはお互い様というものです」

やっと出てきた言葉に、私自身はしっくり来たのだけれど、待ってくれていた二人は、すぐに「そうだったのか」と納得した顔にはならなかった。

「俺の身になって、考えてくれたってこと?」

その通りだ。

私は、困っている彼の気持ちを考えて・・・・・・。

・・・・・・あれ?

私が、人の気持を考える?

困っているであろう気持ちを読んで、力になろうとしてる?

困ったときはお互い様・・・・・・。

そういえばそんな言葉を口にしたのは
初めてだと、その時になって気付いた。

「代々木体育館なら・・・・・・」

お姉さんの声が聞こえた。

顔を上げて、私は我に返る。

「あそこを曲がって、
 坂を上って行けば自然に着くよ」

ペットショップで小動物を見るような顔で、
お姉さんは笑っていた。

その手が指さした先は、本当にすぐそこの曲がり角だった。

「え? そんな近く・・・・・・?」

彼も曲がり角の方を見て、気の抜けた声を出した。

私たちがわからないと悩んでいた
体育館までの道は、実は人に聞くまでもなく、
少し歩いてみればわかるくらい近くにあったのだ。

「わかった?」

確認して、お姉さんはくすりと笑った。

ありがとうございます、と彼が頭を下げる。
私も少し遅れてそれにならった。

それから、立ち去るお姉さんを
二人で並んで見送った。

しばらくすると、
吹き出すように彼が笑いだした。

「なんだよ、
 めちゃくちゃすぐそこだったんだ」

「よかったです、道がわかって」

ひとしきり笑って、彼が私に振り返る。

「ごめん。なんか恥ずかしい思いさせちゃって」

「? いえ、そんなことは」

「それとありがとう。親切にしてくれて」

「お力になれたんでしょうか?」

「もちろん」

軽やかに頷いてくれたことに、
ホッとする気持ちになった。

頬の辺りが、自然とゆるむのがわかる。

「そうですか・・・・・・」

「お礼がしたいんだけど・・・・・・」

そう言って、彼は片手に持っていた紙袋を探りはじめた。

先ほどの、バツネコ柄の紙袋だ。

お礼なんて結構です、と断るつもりが、
何をしてるのだろう、
という疑問が先に立って、
私はその行動を見守った。

やがて、彼は紙袋の中から小さな袋を取り出した。

透明な袋でラッピングされたそれは小さく、かわいく見えた。

「店で、今日買い物した人全員に
 渡してるからって
 もらったものなんだけど、
 中はクッキーみたいでさ。よかったら」

差し出された袋には、なるほどバツネコの形をしたお菓子が入っているのがわかる。

これをお礼に? 道をたずねるのを手伝ったくらいで。

「こんなことをしていただくほどのことは・・・・・・」

「このまま持って帰っても、
 荷物の中で割れちゃって
 ボロボロになりそうだから。
 修学旅行、まだ二日も残ってるし」

「でも・・・・・・」

「もらったものだし、気軽に受け取ってよ」

彼は袋をひき下げようとはしない。

私はそれを見つめて、こんなにちゃんと作ってあるお菓子がボロボロになるのはかわいそうだな、と素直に思った。

「・・・・・・では、すみません、お言葉に甘えて」

手を差し出して受け取ると、彼は満足そうに笑った。

「本当にありがとう。
 助かりました!」

最後にもう一度笑って、彼は、ほんのすぐ近くにあった曲がり角に向かって歩いて行く。

その背中がたくさん歩いている人たちの中に飲み込まれて行くのを見送った。

手にはちょこんと、バツネコのお菓子が入った袋が残る。

それを彼はお礼だと言ったが、私には違うもののように思えていた。

それは、少しだけいつもと違う出会い方をして、少しだけいつもと違う考え方をした私自身への、プレゼントのように思えた。

男の子

うわ、本当にすぐそこだった。

教えてもらった角を曲がって坂道を上って行くと、すぐに「国立代々木競技場」と記された案内板が見つかった。

体育館も確かにあったはずだけど、なるほど「競技場」だったんだな。

まさかあの人、俺が最初に「体育館」なんて聞いたもんだから、わからなかったんじゃないだろうな?

ショップのあった建物から出たところで、人の流れから取り残されたように突っ立っていた彼女のことを思い出す。

特に声をかけやすそうに見えたわけじゃない。

ただなんとなく目についたから、俺はその人に道を聞いた。

制服姿だったし、まさか中学生にはみえなかったので、多分、高校生。

話し方が丁寧ですごく落ち着いているようにも見えたから、もしかすると年上だったかもしれない。

勢いでため口になってたよな、大丈夫だったかな。

今さらながらにそんなことを反省した。

とはいえ本当に年上だったら、そこは大人っぽい余裕で言葉づかいのことなど許してくれるだろうと、都合よく考えるところもある。

なんか小学生のとき、教育実習で来た大学生に憧れた気持ちを一瞬思い出した。

坂道を上って行くと、何人もの人とすれ違う。

相変わらず、声をかけるタイミングなどつかめないほどみんな忙しそうだ。

こんな中で、話を聞いてくれたこと―――――――。

俺はあらためて、彼女に感謝していた。

と、人の流れの中に、見覚えのある顔を見つけた。

「あれ・・・・・・?」

「おや? さっきの方じゃないですか」

にこやかに手を挙げて立ち止まったのは、バツネコショップまでの道を教えてくれた、色素の足りないあのブレザー男子だった。

「よく会いますね。ショップには、ちゃんと行けました?」

「おかげさまで」

手に持った紙袋を持ち上げて見せる。

「よかった、安心しましたー」

「でも戻る道がわからなくなって、
 また人に聞くはめになったんだけど」

「わぁ、それはどうしようもない人ですね」

「悪かったな!」

笑顔とセットになった変わらない口調に、
思わず声が大きくなった。

「ひょっとしてまた迷ってます?
 ここからの道、わかりますか?」

「大丈夫だよ、さすがにもう」

「よく道に迷う人って、
 大抵そういう風に言うんですよねぇ」

・・・・・・言葉が返せなかった。

「こ、今度こそはホントに大丈夫だから。
 案内板も見えてるし」

先ほど見付けた「国立代々木競技場」の
文字を指さす。

するとにっこり、相手は頷いた。

「そうですか」

「ありがとな」

「いえいえ、どういたしまして」

・・・・・・・・・・・・。

そこで、ヘンな間ができた。

軽い会話のリズムに乗れたのはいいが、それを続けられないのが、やはり都会に慣れていないということなのか。

気恥ずかしくなって、俺は、じゃあ、
とだけ言って逃げるように歩きだす。

はい、と明るい声が背中で聞こえた。

そんな自然体の身軽さが、正直カッコいい。

今の自分と比較すると悲しくなる。

でも、いつも笑顔でいるあの感じが俺を不安にさせるのもまた事実だ。

都会で暮らしていると、みんなそうなるのだろうか。

東京って、そういう場所なんだろうか?

憧れるけど・・・・・・やっぱりちょっと怖えぇ!

夕暮れ近い渋谷の街。

集合時間はもう間もなくというところに迫っていた。

「競技場」に続く坂道を、
 俺は駆け足で
 上って行った。

(おわり)

◆公開初日に観てきた【映画リライフ最速レビューはこちら】

◆漫画リライフ:【ReLIFE リライフ】最新 ネタバレ あらすじ

追記: 1年限定で高校生に戻り、人生をやりなおす実験プログラム【ReLIFE~リライフ~】映画化決定!!2017年4月15 ロードショー

◆実写映画版Re:LIFE【リライフ実写映画化の情報はこちら】

  

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